ローバーミニのヒーターユニット修理 というか改造

手前の白い筒状のものがインアラインブロア
19年経過したミニ。ヒーターコックを開けてデフォッガにレバーを動かすと、フロントガラスが蒸気を当てたように曇ります。古いコタツのような匂いもして、ヒーターコアからクーラント漏れがあるのかもしれません。

新品のヒーターコアを調達したものの面倒で作業を先送りにしていたところ、さらにブロアモーターも突然止まってしまいました。端子間の抵抗を測定すると0Ωでした。

ヒーターは自分の地方では無くてもなんとかなるのですが、あれば暖かいしデフォッガも便利です。そこで修理をと考えたわけですが、2015年現在、すでに新品のブロアモーターのみの入手は難しいようです。ヒータユニットASSYでの入手はかろうじて可能なようですが、10万円とかなりの高額。

巷では完動中古品に交換する例が多いみたいですね。それでも故障した自車と同車齢以上のユニットが大多数で、モーターはいつ止まるかわかりません。さらにヒーターコアの交換は必須ですから、中古価格12000円前後というのは非常に高く感じます。

汎用ヒーターユニットは2万程度で入手出来るものの、車体への収まりやデフォッガへの送気切り替えなど問題が残ります。

壊れたヒーターユニットは熱交換器と送風機能を失った状態ですが、送風切り替えをそのまま使えたうえに収まりは当たり前ですがスマートです。純正のヒーターコアを入手済ということもあって、ユニットの送風機能だけなんとかできればうまく使えるかもしれません。

~ユニットの取外し~
助手席シートと助手席足元のエアコン室内機カバーを外し、ユニットにアクセスできるようにします。吸気ダクト車体側を外してから引き抜き、ケーブルを外します。ユニット奥のナットを充分に緩め送気切り替えパネルの下からユニット取付けスクリューを外します。ユニットを右下にずらし、デフォッガへの送気ダクト左右を外し上に押し上げておきます。ホースクランプを緩めてホース上部にずらし、バットなどでクーラントを受けつつホースとジョイントパイプを傷めないように慎重にマイナスドライバでこじって、ヒーターホースを引き抜きます。

’96spiモデルでは、500ccほどの冷却水が出ました。他の年式で2Lという記事もあり大きめのバットを用意したんですが、500ccは正解なんでしょうか?

しばらく時間がかかるので、市販の配管器具で画像のようなジョイントを作りホースを接続、冷却水を補充してエア抜きし走行可能にしておきました。

~考察~
ヒーターコアを外して内部を観察すると、コアの下には冷却水のたまりはありません。コアは下部がベタベタしているので漏れはあったのかもしれません。不思議なのはブロアモーターを外すと、シロッコファンの下に透明の水がかなりの量溜まっていました。
ブロアファンASSYとコアを抜いた純正ヒーターユニット

シロッコファンの収まる部分 奥から吸込み右方向へ送風される

中央がコアが収まる部分

当初、モーターだけを汎用モーターに代替できないかと考え、ファンとモーターとモーターケースにバラそうとしました。しかし、嵌め込んであるだけのように見えるファンがかなり力ずくでやっても外れないのですね。ファンが外れないとモーターケースにモーターを固定しているネジにアクセス出来ない。そこで、ファンの一部に空いている穴をドリルで揉んで拡大し、モーター固定ネジを外しモーターごとファンを外しました。

今は入手出来ない純正部品も、この部分はケースとモーターとファンブレードのアッシーで供給されていたようです。それを考えるとバラせない(バラさない)前提なのかもしれません。

以上のことからモーターのみ代替する案は見送ることにしました。次はファンとモーターを別々、もしくはアッシーで他のものに交換する案を検討してみます。まずは汎用のシロッコファンですが、調度良い大きさのものは当たり前ですが見つかりませんでした。あとは、国産他車のものを流用する案です。しかし、『これが流用可能だ』という情報もなく、ファンの大きさに関するデータがまったく公表されてないので現物合わせになってしまいます。ちなみに、ミニ純正ヒーター(後期のシロッコファンが1つのもの)のファンの寸法を参考までに記すと、直径φ約110㎜×高さ約73㎜でした。仮に調度良い大きさのファンを持つモーターが見つかっても、固定やモーターの冷却をどうするかなどの問題が残るので簡単にはいかないはずです。

そこで注目したのはインラインブロアー。本来は船舶の換気だとかレースカーの室内へのフレッシュエアの導入だとかに使われるものです。市販車ははじめからブロアー機能がついていますから、もっぱらエンジンへの過給効果?とかエアクリーナーへの冷気導入とかの使用例がみられます。この形状ならば、最悪ヒーターユニットに仕込めなくても、吸気ダクトの途中に挟んでやれば機能すると見込んで手配しました。

届いたのは3インチの『attwood社製 turbo3000』12V仕様です。純正ダクトホースにあてがってみると、若干テープなどで調節すればダクト中間に直接接続も可能なサイズ。壊れて動かないファンブレードの空気抵抗分の疑問は残りますが、冷却水の漏れがない場合などではヒーターユニットを外さずに、よりお手軽な機能補修の可能性もあると思いました。

~インラインブロアーの組込み~
インラインブロアーは騒音が大きいとの情報もありますので、出来れば見た目の事も含めてユニットに内蔵してしまいたいと考えました。そこでまず、固定用の足を塩ビ用の金鋸で切断。吸気側のリブを2枚とも金切りバサミで切り取ってグラインダーで平滑にしました。本体はABSかなにかのプラステック製ですので、クラックだけ気をつければ加工は簡単です。
足とリブを除去

なんということでしょう!測ったようにピッタリと収まるではありませんか!ダクト側にはみ出た部分も問題ありません。さらに、コアに向けて風向きを変えるためのエルボー管のスペースもできました。
ピッタリサイズ

ピッタリサイズその2

約φ75㎜に使えそうなエルボパイプは水道用もしくは雨とい用があります。あてがってみたものの、水道用は両側メスで厚さもあってゴツく加工しにくいので、雨とい用を使いたいところ。しかし、φ75の雨といはホームセンター等では扱いが少ないのです。そこでお世話になっている棟梁F氏に相談すると、即行で調達していただけました。この場を借りて感謝いたします。

エルボパイプはオス側の差込部を切り取り、メス側の差込部は屈曲の内側に割を入れてインラインブロアファンを差し込みます。固定はタイラップで締めてビニールテープを巻きました。

ヒーターユニット本体に差し込んで蓋(モーターケース)を閉じてみると、ピッタリの大きさでガタも出ませんでした。エルボパイプの方向を調節して、吸気口部分のブロアとヒーターユニットをビニールテープで固定、回り止めとしました。

画像の様に周りの隙間にスポンジを詰め、余計な空間を少しでも減らします。

モーターから出るケーブルはエルボを通し、ヒーターユニット本体上部にφ5㎜ほどの穴を開けて外に出しました。5A(インラインブロアの推薦は4A。売ってなかったので)のラインヒューズをはさんであります。ちなみに、アース側の純正ケーブルはギボシ端子ですが、エーモンなどの入手しやすいものと太さが若干違って互換性がないようです。外した元のギボシ端子付きケーブルにすげ替えるか、車体側のハーネスも加工するかしなくてはなりません。

~ヒータコアのインストール~
コアの表面プレート裏側辺りに、付属のスポンジテープを巻きます。フィンを傷つけないようにそっと差し込み、2本のタッピングビスで固定します。

クーラントホースをコアに接続するためのアウトレットパイプは、漏れを起こしやすい部分だといわれているようで新品に交換したいところ。しかし、この部品は純正・社外品ともに結構高いのですね。そして、漏れを起こした車の画像を見るとグズグズに腐食している例が多いようです。

外したパイプを確認すると、幸いにも外側にスラッジの付着はあるものの素材の腐食はあまり無いようでした。アルミ製で軟らかいので深いキズを付けないようにスケッパーと真鍮ブラシで慎重にスラッジを取り除き、円周方向にサンドペーパーをかけて表面を平滑にしました。なんとか再利用できそうです。

次はアウトレットパイプとコアの間のパッキン。純正を入手すればすむことなんですが、ちょっとお高い。市販のOリングを使うことにします。各部の実測値は以下の通り。

パッキン溝内径 φ20.5㎜
アウトレットパイプ差込部外径 φ16㎜

外した古いパッキン内径 φ16.3㎜
         巾  2.2㎜
         高さ 3㎜

値からみると、内径がφ16㎜以下で太さが2.25㎜以上のOリングならば使えそうです。
『旧JIS P16』内径φ15.8㎜/太さ2.4㎜
もしくは
『AS568 114』(内径φ15.54㎜/太さ2.62㎜)
後者のほうが良さそうですがホームセンターで入手出来なかったので、『旧JIS P16』内径φ15.8㎜/太さ2.4㎜を使いました。

コア側の肩溝にOリングを置いてパイプを差し込みます。パイプにあるツバで高さのある角断面パッキンをスラスト方向にも押さえつけるような構造ですが、Oリングの場合は高さが足りずスラスト方向のテンションはかかっていない様子。このままでも漏れ無さそうではあります。イレギュラーな方法ですが、一か八かOリングを2段重ねにして組んでみました。

パイプを固定する角ナットだけがなぜかコアに付属しています。しかし使用したところ厚さが足りず使いづらかった(使えないわけではない)ので、古いナットを再利用しました。

~車体への組み込み~
車体へ組み込む前に完成したヒーターユニットに電源だけ接続して回してみました。結構な回転音がして、吹き出し口に手を当てると風が出ているのがわかります。

元通りに車体に組み込み、クーラントを足してエア抜きしました。水温が上がり圧がかかってきても、心配していたホースとアウトレットパイプ間/パイプとコア間共に漏れはないようです。

ノイズは若干大きくなったかなという程度。もともと静かではありませんからそれほどうるさくなったように感じませんでした。音質的にすこし高い音になったような気がしますが。

風量は手をかざした限りでは同程度に感じます。室内は程なく暖かくなったのできちんと機能しているようです。ブロアファン故障中は走行してもほとんど暖かくなりませんでしたから。

今回の作業、ヒーターコアがイギリスからの送料込み11000円程度(14年3月のレートで)、インラインブロアファンが国内通販で送料込み4000円程度でした。

調べていませんが、純正のブロアモーターを電装屋さんなどで5000円程度で修理できたのなら、そのほうが正解かもしれません。新品のモーターASSY・・・入手可能だとしても£300程度しますから現実的ではありませんね。



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