CレコクランクとマイクロライトBB

一晩置いてグリスのお釣りがチョロっと出ています
言わずと知れたカンパニョーロ・コルサレコードクランク(campagnolo corsa record)。組み合わすボトムブラケットはサンツアー・マイクロライトXC PRO。アウターチェーンリングにカンパニョーロベースのチェーンリングガード、ミドルリングにTA・VENTO-K 42Tを使ってTA・ZERITO26Tを継ぎ足しています。

見た目も組み合わせも突っ込みどころ満載、かなりのイレギュラー仕様です。レーシーなCレコクランクもTA製チェーンリングで一気におフランスな雰囲気(邪道?)。一部の人にお叱りを受けそう。

その美しさからどうしても使いたくて格安で入手したそれなりの程度の中古Cレコクランク。アルマイトを剥離しかなり研磨して再アルマイトに出したものの、腐食が深く失敗。これ以上の研磨は無理と判断して2液ウレタンクリア塗装に切り替えました。ポリッシュ後の足付けは行わずにプライマーにミッチャクロンを使用。意外に丈夫で、ガシガシ手荒に乗らないせいもあって1年以上経ちますが剥がれてきたりしていません。

アウターチェーンリングは使い古しのカンパニョーロ製を、サンダーで多角形になるように切断し角を落としていく手法で最終的にグラインダーで円形に仕上げてチェーンリングガードに仕立てたもの。PCD135のガードなんてめったにありませんから。『そういう用途のクランクじゃないから』と言われればそうなんですけど・・・。

ミドルリングのVENT-Kは『なんちゃってトリプル』化のためのアダプターリング。パワートルクのトリプルクランクや78デュラのトリプルなんかも同じ仕組ですね。このリングを使うことで幻のCレコトリプルクランクを探すことなくトリプル化できます。このチェーンリング、以前はインナーボルトがアーム下に隠れる形状だったんですが、新型でこの形に。旧型は探したのですが入手はかなり難しそうです。この形があきらかにおフランス感の原因です

変速性能については、仕掛けはついているものの同条件で比較したカンパ純正にくらべると劣ります。操作や調整次第ではありますが、社外品でメーカー想定外の使い方ではこんなものでしょう。レースでなければ必要十分な実用性です。ガラガラいって上がらないなんてことはありませんし。

インナーは同じくTAの26T。これはカンパ純正と比べても細身で美しいです。『ナゼにトリプル?』『ナゼに26T?』に関してはこちらを。格好良く言えばパスハント仕様、要はヘボ足なんです。

刻印のある右ワンとクランクの間から古いグリスが押し出されます。ブルーのフレームとの間には5㎜分のスペーサー
規定外の使い方ですしクランクも中古ですので、BB軸長の選択は現物合わせです。軸長を探るべくCレコクランクに対応するISOテーパーの軸長111㎜ケンタウルW用BBでテストします。各部を計測して見当をつけたBB規格は、ISOテーパーの左右対称軸長125㎜。そしてハンガーはJIS68㎜のワンとなるとかなり難しいです。存在はしても完全なビンテージパーツで非常に高価。この時点ではあくまで推測値ですから、お試しで買える価格ではありません。

クランクがCレコといえど、先に記したようにサビサビ傷だらけの半分ジャンク品ですから、嵌合部の消耗を無視してJISテーパーのBBを考えてみました。軸長120㎜以上で回転性能がよく安いもの・・・手持ちのサンツアーBBを使ってみることに。

BBはサンツアー・マイクロライトXC PRO。JISテーパーの左右対称軸長120㎜。ハンガーはJISの73㎜用で、右ワンに5㎜分のスペーサーをかまして68㎜ハンガー巾のフレームで使用しています。見た目も精度も回転も大変よろしいです。

計算上はテーパーがJISになり太ったぶんを差し引き、123㎜あたりの軸長が必要です。XC PROはハンガー巾73㎜用ですから右ワンに2.5㎜のスペーサーで左右対称。短い軸長を補いチェーンラインを優先して、右ワンに5㎜分のスペーサーをはさみました。

このBB、グリスガードシステムというバラさずにグリスアップできる機構がついています。専用のグリスホールの空いたフィキシングボルトを使い、グリスガンでグリスを送ると古いグリスがBB軸とワンの間から押し出されるというもの。

カップアンドコーンBBのグリスアップは定期的にしたいけれども、スクエアテーパークランクの頻繁な脱着は避けたいもの。ISO規格のクランクに太いJISのスクエアテーパー軸で使用していればなおさらです。クランクを外さずにグリスアップ(簡易的だとしても)できるのは魅力的な機構です。

しかし、それにはグリスホールのあいたグリスガード専用ボルトが必須ですが、使用できない理由がCレコクランクにはあるのです。オーナーの方にはあたりまえのことですが、フィキシングボルトキャップが逆ネジで、通常のクランク外し工具が使えません。

Cレコクランクを使うには、専用の逆ネジクランク外し工具を入手するか、純正のCレコ専用セルフエキストラクターボルトを使うしかありません。逆ネジの工具は非常に高価。自分の場合クランクの入手価格よりはるかに高額で、他に使い道の目処がありません。

よって、このクランク、セルフエキストラクターボルトで使用している方が大半ではないでしょうか。この仕組みのボルトは弛めるだけでクランク自体も嵌合が解かれ外すことができ、専用工具要らずの優れものですが、そこはカンパ、一筋縄ではいきません。新品の入手も可能なようですが、数が少なくなっていることもありそれなりの値段。そして、六角レンチのサイズが7㎜!とかなりくせものです。

セルフエキストラクターボルトを使いつつグリスガードシステムを使うのにはどうしたらよいか?・・・エキストラクターボルトにグリスホールを開けてやればよいかと。

バイスにねじ山保護のためゴムシートを介してボルトを固定し、ボール盤にφ1.7㎜のドリルで作業します。サンツアーのボルトはもっと細い穴でしたが、手持ちの一番細いものを使いました。細くて深い穴ですから、作業途中でドリルが折れて残るとクランク自体が使用不能になりかねません。回転数を落とし、慎重に切粉の除去と切削油での冷却をしながら作業しました。予想通り、精度が出ずにボルト先端で2㎜程度中心からずれてしまいましたが、機能や強度には影響無さそうなのでOKです。φ4㎜程度の刃でグリスガンのニードルノーズがずれないように軽くザグリをつけます。
中央にグリスの詰まった穴
使ってみるときちんとグリスが入っていき、古いグリスが押し出されます。一晩置くと1センチ位ちょろっと逆流しています。もう少し細い穴のほうが良かったのかも。砂塵などがつくと中に押し込んでしまうことになりかねません。精神衛生上はここにキャップをしたいところですが、7㎜だからなぁ。

ちなみに、軸の外周にあるグリスの出る穴は左右それぞれ1箇所づつ。グリスアップ時はクランクをゆっくり回転させながらグリスガンを使うと、まんべんなく潤滑できるような気がします。

2 件のコメント:

  1. いかにも玄人好みですね。
    流石   キャノンデールS

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  2. TIME FIBERFLEXペダルを破壊してしまい交換を余儀なくされたための、ついでの作業でした。白いペダルになってるでしょ。
    キャノンデールSさんもホイール交換からしばらくたって、何かしたい頃合いではない?

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